ハードSF短編を求めるならハーラン・エリスンを読め!
俺の名は、コセン・ザ・ウォーリア。音無しの街を彷徨う探求騎士だ。
今回紹介したいのは、ハヤカワ文庫から出版されているハーラン・エリスン関係の文庫本だ。ハーラン・エリスンはSF作家だ。伝説の。誇張じゃなくて本当に伝説のSF作家だ。彼の伝説は、日本とアメリカを隔てる深い溝に沈んでおり、全容を把握することもままならないが、いくつかの有名な伝説をあげると…
・自然と脳内麻薬が出る体質で、常にハイテンション。
・気の利いた話題が自然と口に出るためか、そのカリスマ性に惹かれる人が多数。
・オハイオ州立大学の教授と喧嘩して退学処分に。理由は教授が彼の文章を馬鹿にしたから。後年、ハーラン・エリスンは自分の作品が活字になるたび、教授にその作品のコピーを40数余年送り続けた。
などなど。探せばもっとあるかもしれないが、彼の作品を読んでみる方が早い。そこには、底知れぬハーラン・エリスンの世界が横たわっているのだから。
どんな人におすすめ?
ハードなSFが好きだけど、長編はちょっと重いなあ…
という人におすすめだ。
どんな本が出てるのか?
紹介しよう。
まずはハーラン・エリスン世界の入門にうってつけなハヤカワSF文庫の「死の鳥」だ。
2016年に出た最近の短編集だが、中身は古い時代に書かれた傑作SFの超高密度体だ。
衰え切った地球に安楽死を与えるべく旅立つ男を描いた表題作の「死の鳥」をはじめに、年月が奪い去っていくものを与えてくれる少年と男の話「ジェフティは五つ」死の間際に男に訪れた奇妙な夢を描く「竜討つものにまぼろしを」。ハーラン・エリスンの傑作がこれでもかと詰まった名本だ。
次に1979年に出版された「世界の中心で愛を叫んだけもの」
賢明な読者のみなさんはお気づきだろうが、ハーラン・エリスンに関係した本は、この1979年に出版された本を最後に、2016年に死の鳥が出版されるまでの37年の間、何も手つかずのままだったのだ。この理由はわからないが、とにかくSF史における重大な作品の数々がまた読めることを喜ぶべきだろう。家庭持ちの男がファミリーカーで若いレースチャンピオンと決闘する「101号線の決闘」、薬中で金欲しさに女を殺した男が迷い込んだのは、神代の時代から神話によって語り継がれる、ある神が捕らわれた土地だった。「名前のない土地」。他にも数々の名作が、この古い文庫本に息づいている。読まないのはもったいない。
そして、今年出版された「ヒトラーの描いた薔薇」。手に入れてあるが、内容はまだ読んでいない。しかし、最高の職人が織りなす刺激的なSF短編の数々にどっぷりとつかれることだろう。
それから、続刊の出ていないSF短編アンソロジーの「危険なヴィジョン」。ハーラン・エリスンが作者の一人で参加している。気になったら、手にとってみるのもいい。
以上が現在わかっているハーラン・エリスン作品のすべてだ。
彼の作品の魅力。文体のスピード感。簡単な言葉でより刺激的な表現を行う痛快感、残酷でありながら下品さを感じさせない高貴なバイオレンス描写。そして何よりも、ページをめくればめくるほど続きが気になる中毒性。狂気と薄紙一枚隔てて存在する、魅力的なハーラン・エリスンの世界。これらは、ぜひ読んでいただきたい作品群だ。